ビッグコミック
2014.11.26
ラサール石井さん「食べ物マンガを読みながらメシを食うのがいちばん」◆屋根の上のマンガ読み
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第64回 ラサール石井
《プロフィール》1955年生まれ、タレント・俳優・演出家。「コント赤信号」でブレイクしたのち、数々のバラエティ番組出演のほか、舞台でも精力的に活動を続ける。演出・出演する舞台「吉良ですが、なにか?」が東京・本多劇場にて上演中。
《プロフィール》1955年生まれ、タレント・俳優・演出家。「コント赤信号」でブレイクしたのち、数々のバラエティ番組出演のほか、舞台でも精力的に活動を続ける。演出・出演する舞台「吉良ですが、なにか?」が東京・本多劇場にて上演中。
「[チェイサー]の主人公の気持ちが、とってもわかります」
小学生のころから、とにかく手塚さんに関する雑誌はすべて買っていました。マンガはもちろん、いちばん楽しみだったのは加入していた『鉄腕アトムクラブ』の会報の、手塚先生のエッセイ。シールやワッペンも集めましたね。何かの名簿や表札に「手塚」って名前があるだけでドキドキするような感覚があって、神様みたいに思ってたんです。貸本屋で借りて何度も読んだのは[ロック冒険記]と[0マン]ですね。今では全集を大人買いして、リビングにドーンと揃えてあります。
ビッグコミックスペリオールで連載中の、手塚さんを追跡する漫画家が主人公の[チェイサー]が面白いですね。気持ちがとってもわかる。僕の子供のころのことを描いていて、そのリアリティが懐かしい。たしかに僕ら子供の目から見ても、手塚さんはなんでこんなにお話がいっぱい作れるのかって、思ってましたから。アニメを作りながらマンガのペン入れもちゃんとしていたっていう、エネルギーがすごいですね。しかも教養があるし。資料を読んでインプットする時間も入れたら、これはとんでもないことだなと思って。だから自分がちょっとくらい寝てなくても、「そんなの手塚さんに比べれば...」みたいに思えるんですよね。知れば知るほど追いつけない。それも[チェイサー]の面白いところです。
[チェイサー] ©コージィ城倉/小学館
食べながら読む
子供のころからの癖で、いまだにメシを食うときマンガを読まないといられないんですよ。学校の帰りに、たこ焼き屋さんに寄ってたんですね。そこには必ずサンデーやマガジンやキングがあって、それ読みながら食べてたんで、条件反射でマンガを読むと何かを食べたくなる。だから逆に、ダイエットしてるときはマンガの量が減るんですよ(笑)。雑誌が手元にないときは電子書籍で読んでますし。
なかでも、食べ物マンガを読みながらメシを食うのがいちばん。ひとりで定食屋さんに入って、お盆の端にページを挟んで読んだり、お寿司屋さんではカウンターの下にマンガを隠して読んだり。ときどき自宅の食卓でも、嫁に「マンガ読んでいい?」なんて聞いて、ふたりで読んでることがあります(笑)。おすすめは[蒼太の包丁]ですかね。料理バトルものはやっぱり面白いんですけど、[蒼太の包丁]はまったくそういう場面がないのにすごくいいんです。それから[きのう何食べた?]は今まで読んでなかったんですが、ふと買ってみたら面白くて、嫁も気に入って。BLの要素もソフトに表現されていて、予想以上に楽しめました。
影響を受けたといえば[がきデカ]ですね。ギャグの形を完全に変えてしまった。当時は大学生だったんですけど、喜劇が好きで、劇団でずっとコメディーやってました。すぐに[がきデカ]のギャグを取り入れて、舞台上で「死刑!!」ってやったら誰も笑わない(笑)。誰も知らなかった。早すぎたんですね。中川いさみさんにも笑いの影響を受けましたね。「この人、俺らがやってる演劇とかコントにすごく近い」って感じました。
手塚マンガの影響
手塚さんの作品は[鉄腕アトム]でさえむなしい感じのラストシーンがすごく多いんですよ、ハッピーエンドよりも。物語には苦い終わり方もあって、そのほうがよかったりするんだっていうことを子供のころに教わりました。当時の自分には画期的でしたね。
お台場とかの景色って、手塚さんが描いてた未来都市みたいなんですよ。いまだに長いエスカレーターを上るとき、高速道路がビルの中に入っていくのを見るとき、手塚マンガの中にいるみたいだって思います。それは手塚さんが予見してたんじゃなくて、手塚さんの描いたものに建築家が少なからず影響されてしまっているんじゃないかと。手塚マンガはほとんどの人に影響を与えてると思いますね。
《こんな作品もおすすめしていました!》
[めしばな刑事タチバナ]坂戸佐兵衛、旅井とり
[将太の寿司]寺沢大介
[クマのプー太郎]中川いさみ
[火の鳥 鳳凰編]手塚治虫
■次回予告:第65回 吉松徹郎(実業家)
マンガの話をする、人にマンガを贈るときの気持ちは
ワインを好きな人の感覚と似ているという
アイスタイル吉松社長。
[め組の大吾][MOONLIGHT MILE]など!
<12/10(水)更新予定>
【「屋根の上のマンガ読み」バックナンバーはこちら!】
(取材構成:ビッグコミック編集部、根本和佳 撮影:松原康之)
関連リンク
ビッグコミック公式
【初出:コミスン 2014.11.26】
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