ビッグコミック
2014.10.26
オイシックス社長・高島宏平さん「『スラムダンク』の安西先生に、褒めたり怒ったりしてもらいたい」◆屋根の上のマンガ読み
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第62回 高島宏平
《プロフィール》1973年生まれ、実業家。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、外資系経営コンサルティング会社を経て、食品宅配スーパーを手がけるオイシックス株式会社を設立、代表取締役社長を務める。
《プロフィール》1973年生まれ、実業家。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、外資系経営コンサルティング会社を経て、食品宅配スーパーを手がけるオイシックス株式会社を設立、代表取締役社長を務める。
「僕のスイッチは[SLAM DUNK]13巻です」
学生時代に会社をつくったメンバーの間で流行ってたのが[サンクチュアリ]です。日本を建て直そうというふたりの男が、片方は国会議員に、片方はヤクザになり、それぞれの道でのし上がって、あとで手を組む物語なんですが、自分たちもこの方式を取り入れようということで。みんないったん会社を離れていろいろ学んで、3年後に合流して、また会社つくろうと。そういうきっかけになったマンガですね。それぞれ働きながらも、週末に仲間と集まって話し合い、インターネットを使った食品の事業をやると決めたんです。
いちばん好きな作品は[ブラック・ジャック]ですね。ブラック・ジャックはコミュニケーションがあまり上手じゃないんですけど、半端ないくらい思いやりがあって、優しそうで優しい人よりもかっこいい。そういう彼のスタイルがいいと思うのと、やはりマンガとしての完成度がすごく高いです。一話完結なのに感情移入できるし、どの巻のどの一話を切り出しても、すごく深いし。あと僕は忘れっぽいんで、何度読んでもいちいち感動できるという(笑)。
それから松本大洋さんの[鉄コン筋クリート]。すごく好きですね。1コマ1コマの、絵のすごみと世界観。アートに近いのかなと思いますけどね。
「国境って何だろう」って、僕らの時代のひとつのテーマだと思うんですよね。そもそも国の境目があることで、どれだけ世の中を幸せにしているのか、不幸にしているのか、どっちなんだろう。国という概念を当たり前としてとらえているけど、ほんとにそれって10年後も同じなんだろうかって思うんです。[沈黙の艦隊]には、潜水艦が独立国を宣言することの意味を考えさせられる面白さがあります。それに、あの乗組員たちみたいに経営できたらすごいだろうなと(笑)。航海技術を持ったプロ中のプロである70数人が、完全に私利私欲を捨てて息を合わせてやってますよね。潜水艦の中でどうテンションを維持するのか気になります。
[サンクチュアリ] ©史村翔・池上遼一/小学館
律してくれる人物
[SLAM DUNK]は、僕らの世代の起業家はだいたい読んでると思います。起業家の友達とは、会話のなかに自然とマンガのセリフが出てきたりしますね。「バスケがしたいです」とか「あきらめたらそこで試合終了だよ」とか、[SLAM DUNK]のセリフはとくに多く登場する気がします。
僕はテンションが下がったときに[SLAM DUNK]13巻を読むんです。神奈川県予選でキャプテンの赤木がケガをして、相手は県内最強の海南大附属。これはやばいっていうところで、主人公の同級生の流川がすごい活躍をして、大差を追いつく。とにかくその流川を見てると自動的にテンション上がるんです。僕が社員によく言うのは、自分のポジティブスイッチを見つけるといいよっていう話。モチベーション上げるのって内的な要因だと思うんですけど、バイオリズムの波を自分でコントロールできるようになると仕事がよくやれると思うんですよね。たとえばこの上司にこういうことで怒られると気分が落ちる、みたいなネガティブスイッチはわかってる人多いんですけど、ポジティブスイッチを把握してる人はそんなに多くない。この曲を聴く、この場所へ行く、ここのシュークリーム食べるとか何でもいいんですけど、自動的に気分が上がるスイッチを持ってるといいよって話をするときに、例として「僕のスイッチは[SLAM DUNK]13巻」だと話してますね。
前の世代の経営者が『竜馬がゆく』などの時代小説を好んだりするのと、僕たちがマンガ読むのってほとんど同じようなことだと思うんです。経営者って上司や先輩がいないんですよね。だから、自分を律してくれる誰かを必要としている。ときどき僕も、[SLAM DUNK]の安西先生に褒められるか怒られるか考えたりします(笑)。架空の世界や歴史上の人物に、空想の中で褒めてもらったり怒ってもらったりするのは、とくに経営者においては必要な行為だと思います。だからマンガを好きな人多いんじゃないかな。
《こんな作品もおすすめしていました!》
[ブッダ]手塚治虫
[アドルフに告ぐ]手塚治虫
[バガボンド]井上雄彦
■次回予告:第63回 武田双雲(書道家)
萩原一至・冨樫義博作品の描線の勢い、
書道でいう「筆勢」に憧れるという武田さん。
自分で筆をコントロールできなくなる瞬間の楽しさ、
ジャンプ世代として考える書道のこれから、など!!
<11/10(月)更新予定>
【「屋根の上のマンガ読み」バックナンバーはこちら!】
(取材構成:ビッグコミック編集部、根本和佳 撮影:松原康之)
関連リンク
ビッグコミック公式
【初出:コミスン 2014.10.26】
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