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【連載コラム】『テツぼん』原作者、高橋遠州先生のテツオタ話。第5回は箱根を越えるため補助機関車を連結していた山北駅!!

ビッグオリジナル

2014.05.01

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第5回【山北駅】






 山北駅、と言われても多くの皆さんはどこにあるのかピンと来ないでしょう。御殿場線山北駅と言ってもまだピンと来ないかもしれません。箱根山の北のあたり、と言えばだいたいわかるかと思います。

 箱根山は「天下の険」と唄われたように伊豆半島の付け根にどっかりとそびえていて昔から東海道の大きな難所となっていました。明治になって東海道線を敷くときにも当然大きな障害となって、当初は箱根山を北に迂回する形で線路が敷かれました。それでもある程度の勾配は避けられず、SLが主力だった当時は補助機関車を連結しないと勾配を登れない状況でした。その補助機関車を連結していた場所こそがここ山北駅だったのです。





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現在の山北駅







 山北駅は山あいの駅です。ホームに降りてみると山あいの駅にしては驚くほど広い構内が見渡せます。しかし今そこに列車の姿はありません。昭和初期まではこの構内を箱根越えのための機関車が埋め尽くしていたのですが、昭和9年に丹那トンネルが開通すると東海道線の本線はそちらに移ってしまい、箱根迂回ルートは御殿場線というローカル線に格下げされてしまいました。

 戦前の日本には言うまでもなく新幹線も高速道路も民間航空路もありません。東海道線こそがまさに唯一無比の大動脈でした。山北駅はまさにその大動脈たる東海道線の難所越えのための要衝駅の一つだった訳です。しかし今はもうその役割を終えて、山あいにひっそりとたたずむ静かなローカル駅になっています。





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 ともかくまずホームに降りてみましょう。ガランとした広い構内を見渡した後、下り方向(御殿場方面)を見てみるとその先で線路が登り勾配になっているのが目で見てもわかります。実際、この山北駅から御殿場駅までは電車に乗っていても傾斜を感じられるくらいの勾配になっています。SLの頃はそれこそあえぐようにしてこの勾配を登ったんだろうなと想像すると、それはそれで乗ってみたかったなと勝手なことを思ったりします。 





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線路の先が上り坂になっているのがホームからでも分かる。







 ホームから長い跨線橋を渡って駅に出ると改札口に「駅員」さんがいます。しかしこの方たちはJRの職員ではありません。JRは2012年に山北駅を無人化してしまったために、それを惜しんだ町が元鉄道マンらを中心として採用した駅スタッフの方たちです。切符販売や観光案内が主な業務で本来の駅業務をしている訳ではありませんが、それでも駅に人がいるといないとではずいぶんと印象が違います。"鉄道のまち"として栄えた山北町ならではのこだわりではありますが、ぜひ今後も続けていってもらいたいはからいだと思いました。

 駅前から陸橋を渡って南口に行くと小さな公園があって、そこにSLのD52が静態保存されています。かつてはこんなSLが煙を吐きながらこの構内にひしめいていたんだなと改めて往時をしのばされます。

 この公園を抜けて更に先に行くと三良橋という線路をまたぐ小さな陸橋がありますが、実はここ、通行人の迷惑になるので三脚は立てないでください、なんて看板もあるくらい撮りテツの間では有名な撮影スポットになっています。両脇の土手に桜が咲く頃にはそれこそズラリとカメラが並ぶみたいですが、私が行った時にはひっそりとしていておかげでゆっくりと橋の上から駅構内の展望を楽しむことがでました。





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 マニアとしての勝手な思い入れではありますが、私はかつて栄えていたけど時代の流れととともに寂れていき今は昔の片鱗だけを遺しつつひっそりとたたずんでいるという駅や鉄道施設が好きです。

 『テツぼん』の主人公仙露鉄男も同様で、そのためかこの山北駅にはたびたび訪れています(単行本7巻4話、8巻4話etc)。しかし悲しいかな現職バリバリの政治家である彼はなかなかのんびりと駅散策という訳にはいかないようです。さりとて彼に政治家を辞められたら私も困りますから、これからなるべく彼にもそうした機会を与えてあげようと、自分だけのんびりとそんなことを考えたりしました。





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(執筆:高橋遠州 担当:ビッグコミックオリジナル編集部)

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【初出:コミスン 2014.05.01】

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