2022.09.30
【67歳の新人 ハン角斉短編集】発売記念インタビュー!
池上遼一氏「67歳の新人」を語る!
プロ漫画家たちも称賛する圧倒的な原石!
衝撃作『山で暮らす男』で新人賞を受賞し、業界を騒然とさせた67歳の新人・ハン角斉。
漲る初期衝動と独自の世界観でプロも称賛する、氏の読切6編を収めた奇跡の初単行本発売を記念し、池上遼一氏が「67歳の新人」について語る。
デビュー作の『山で暮らす男』を読んで以後、ハン氏の新作を楽しみに読んできたという池上遼一氏。
コミックス発売を機に「67歳の新人」を大いに語っていただいた。
【ハン角斉作品との出会いは…?】
©︎稲垣理一郎・池上遼一
新人さんの作品はよく読むんですよ。でも、既存の作品の影響が感じられたり、いま流行っている絵にはあんまり惹かれないですね。新人賞の審査員をしていた頃も、たとえ絵は稚拙だったり常識はずれであっても、誰からの影響も受けず独特の社会の捉え方をしている新人さんを評価したいと思ってました。常識や流行りなんて、時代で変わっていくから。
初めて読んだ角斉先生のデビュー作『山で暮らす男』は、独特の絵で、誰の影響も感じなかった。毒のようなものも感じたんです。狂気じみた人物像、山下清のような執念を感じる緻密な描き込み、僕らが感じている常識が意図的にくるわされていくような違和感、女性のどこか普通じゃないエロティシズム、そしてどんでん返し。「ものすごいなあ」と思いましたね。こういう発想、ちょっと誰も思い浮かばない。異才だと思いましたね。以来、発表された読み切りを楽しみに読んできました。
【ハン角斉の魅力は…?】
一言で言うと「漫画でもあり、漫画の範疇をも超えた深い読後感が味わえる」ところ。どこか、僕が若い時に夢中で読んだカフカやカミュ、ゴーゴリなどの不条理文学を彷彿とさせる読後感があります。でも、不条理と戦うとかじゃなくて、わりとこう不条理の世界を粛々と生きてる感じ。さすがに老練な方が描かれる作品だなぁ…と(笑)。
一方で、「おかしいなこれ?」と違和感を感じさせて読者を自然に引き込むテクニックや、優しさや哀しみ、驚きや怒り、そこはかとないおかしみを感じさせる結末の妙もあって。強いて読者のウケを狙ってとか、無理に明るくしようとかせずに、素で好きなものを描いて、エンターテインメント化されてる。そういうハンさんが羨ましいな。憧れだなって感じがする。僕はガロで描いてたせいか、ああいうことを死ぬ前にもう一回やってみたいというのはありますね。その頃の作品、ほとんど救いのない話でマスターベーションみたいだったけど(笑)、誰にも影響を受けてなくて、時代の空気を感じてそのまま吐き出しちゃってる感じが、いま読んでもいいなぁと思うんですよ。愛着がある。
【今後のエールとアドバイスお願いします!】
今後もインパクトの強い短編を描き続けたら良いと思います。最近NHKで星新一の短編が実写ドラマになりましたけど、一本一本ドラマになったら面白いよね。単行本で5冊くらい短編を描き続けて。あと10年くらいかかるな(笑)。カフカの『城』のような、不条理をモチーフにした長編も読んでみたい。(ハン氏が本業で整骨院を開業されていると聞いて)整骨院に来る色んな客のドラマを描いてもいいんじゃないですか。僕も月一回整体に行くんだけど、先生に聞くといろんな人がいるよーって言ってたから。
なんといっても、67歳なんてまだまだ若いですよ。僕は90歳まで描き続けた北斎画伯に憧れてますから。角斉先生はあと20年は描けるんじゃないですか。僕はあと2年くらいかなって思ってますけど(笑)。
【池上氏のお気に入りの一コマ】
『眠りに就く頃…』より
「このキスシーン、星空の描き方、本当にいいシーンだと思いましたね。
オチも僕なんかの年齢になると他人事じゃないなっていう…(笑)」
【ハン角斉氏より】
池上先生は、私が若い頃、漫画家になりたい夢を抱いていた時にその絵を見て何度も挫折させられた先生です。また、自分もこの歳になってから漫画を描くようになって先生の絵がいつも自分の「戒め」になっています。池上先生の絵を見て、「サボるなよ」といつも自分に言い聞かせ、叱咤しています。今回、コメントをいただけることも、何だか夢のようで現実感が全くありません。本当にありがとうございます。励みにいたします。
【『67歳の新人 ハン角斉短編集』について】
BIG SUPERIOR COMICS 発行/小学館 定価/715円(税込)
プロ漫画家たちも称賛する
圧倒的な原石!
衝撃作『山で暮らす男』で新人賞を受賞し、業界を騒然とさせた67歳の新人・ハン角斉。
漲る初期衝動と独自の世界観でプロも称賛する氏の読切6編を収めた奇跡の初単行本!
池上遼一氏、感嘆!
「漫画であり、漫画の範疇をも超えた深い読後感!
毒、狂気じみた人物像、常識がくるわされていく違和感、エロティシズム…カフカやカミュのような不条理文学を彷彿とさせる。異才だ!」