ビッグスペリオール
2013.12.12
作者は漫画家にして文化人類学者! スペリオールで注目の新連載スタート!!
ビッグスペリオール
12月13日発売の「ビッグコミックスペリオール」新年1号から始まる新連載・『ムシヌユン』の作者である都留泰作氏は、漫画家でありながら博士号(理学)持つ文化人類学者という、特異な経歴の持ち主だ。前作『ナチュン(月刊アフタヌーン・講談社)』より3年、今号から満を持して新連載を始める都留氏の足跡に迫るインタビューをお届けする。そう、以下は驚くべきことに「漫画家」の足跡なのである。
−都留先生が文化人類学者になられた経緯、というのを伺いたいのですが。 「小さい頃から昆虫少年でしたし、ずっとね、生物の研究がやりたかったんです。それで学部時代は名古屋大で生物学を専攻してたんですけど、生物学といってもミクロなんですよ。実験室で遺伝子を導入したりだとか」 --具体的には何を研究されてたんですか? 「臨海実験所っていう海の研究所があって。離れ小島で、舟で渡る『ドクター・モローの島』みたいな研究室。まかないのおばちゃんだけ、舟で通ってご飯を置いて行ってくれるという(笑)。そこで発光バクテリアのメカニズム研究を。もちろん楽しかったんですけど、もっと動物を追いかけるような生物学と、一方で心理学や社会学のような人間を研究する学問への興味が強くなって。そのふたつを合体させると"文化人類学"だ、ということになったんです。 ただ大学院に行く時に、理系から文系って結構難しかったんですよ。だから理系でそういうところは......って探した時に、京都大学理学部の生物学科に生態人類学っていうのを見つけたんです。"なんだかよく分からないけど、アフリカの研究しているぞ!?"みたいな」 --それで京大に入って本格的に文化人類学へ? 「まあ特殊なところなんですよね。理系っぽい立場からフィールドワークをするという、文化人類学という観点からすると傍流。探検しに行って、人間でもサルでも、昆虫でも歩きながら生態を調べる、という学風で。"サル屋"とか"ヒト屋"とか言われるんですけど、僕は"ヒト屋"。その中でも"お前は乾いたところと湿ったところ、どっちがええ?"って言われて(笑)、"湿ったところで"と。昔から熱帯森林に対する憧れっていうのがあるんですよ。それこそゴライアスオオツノハナムグリがいる! っていうレベルから(笑)、生物過剰な世界、生態系への憧れ。それで、のべにすると2年近くアフリカ、カメルーンの狩猟採集民・ピグミーの人々のもとへ行って、彼等と一緒に生活をして観察をしました。主に彼等の宗教儀礼が研究対象です」 --その成果を得て、博士号も取り、富山大学で人文学の准教授にもなるわけですけど、その頃には一方で漫画も描き始めているわけですよね? 「そうですね。学部時代も含め昔も少しばかり描いてたんですが、研究との両立が上手くいかずに、いったん漫画はやめてたんです。ただ文化人類学って若者の学問だな、っていう部分があって。やっぱり1年、2年、腰を据えて長期間フィールドに行かないとデータも集まらないですしね。大学に就職することでそれがかなわないならば、少しテーマを変えて......と考えた先に漫画があったんです」 --それにしても一方で研究、一方で漫画、都留先生の中でその棲み分けというのはどうなっているんでしょうか? 「あるがまま......という部分もあるんですけど、どこかで繋がってるのかもしれない。僕にとって漫画での表現欲というのは、"この自分の感情を""この自分の世界を"表現し、承認されたいというのとは少し違うんです。研究する人には色々な種類がいると思うんですが、ある種人類学をやるようなタイプの研究者って、宝探しの感覚だと思うんですよね。"新種発見"じゃないですけど、自分の中に表現したい欲求があるというより、自分の中に表現されていなかった凄い感覚を発見したい、という。発見する喜び。だから研究者としての自分と表現者としての自分って、僕の中では矛盾はない。僕は今でも何かを発見してるんですよ。こうして新しい作品を描きながら」 【プロフィール】 都留泰作(つる・だいさく) 1968年生まれ。94年、京都大学理学研究科動物学専攻修士課程修了。翌年、狩猟採集民バカを対象とした調査のためカメルーンへ。01年、博士(理学)を授与される。富山大学人文学部准教授を経て、現在、京都精華大学マンガ学部准教授。漫画作品に『ナチュン』(全6巻/講談社)。
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スペリオール
【初出:コミスン 2013.12.12】
スペリオール,ムシヌユン,都留泰作