2018.12.10
週刊スピリッツ

週刊スピリッツ 連続テレビドラマ『忘却のサチコ』クライマックス直前スペシャル企画!!


「週刊ビッグコミックスピリッツ」の人気連載をテレビドラマ化した『忘却のサチコ』が、現在絶賛放送中! 作品にぴったりと話題のオープニング・テーマの曲名は、ズバリ『忘却のサチコ』! この曲を制作した、無類の漫画好きとしても知られる「スカート」の澤部 渡さんに、誕生秘話や漫画と音楽について語ってもらいました。

スカート

澤部 渡によるソロプロジェクト。2010年、自身のレーベルを立ち上げ、ファーストアルバム『エス・オー・エス』をリリース。2017年、アルバム『20/20』を発表し、メジャーデビュー。ドキュメンタリー『山田孝之のカンヌ映画祭』のエンディング・テーマや、映画『恋は雨上がりのように』の劇中音楽など、多彩な活動を展開し、音楽シーンで注目を集めている。

昔のアニメソングのような作品と近い楽曲に。

「リアリティーよりも原作漫画みたいなかわいげを優先したドラマになるので、コミカルに華々しくオープニングを飾ってほしい」。最初の打ち合わせで山岸聖太(さんた)監督に、このように頼まれました。さらに、作品との距離を近くしてほしいというオーダーも。昔からある古いアニメって、たとえば『サザエさん』のオープニングが『サザエさん』という曲名であるように、作品と曲の距離がすごく近いですよね。だから原作そのままのタイトル『忘却のサチコ』にさせていただきました。どのようにも解釈できるタイアップ曲ではなく、振り切った曲を作る覚悟を込めて。

今回は先に詞の一部を書きました。昔のアニメソングも詞が先だと感じる曲が多いので、それにならって(笑)。作詞で苦労したのは、監督からサチコを見守るような視点で、かつ「サチコさん」というフレーズを使ってほしいといわれたことですね。同僚の編集部員の視点だと「佐々木」や「佐々木さん」になるから違いますし……。それで、原作にすら出てこない誰かの視点にしたら、結果的に僕の視点で彼女の魅力にフォーカスしたラブレターくさい歌詞になりました(笑)。

サウンドとしては管楽器をアレンジで入れています。連続ドラマの前に放送されたドラマスペシャルを見た時に感じた、原作から抜け出してきたような高畑充希さんの奇妙なかわいさを浮きあがらせたかったからです。今までのスカートにはない華やかさが広がったので、すごく感謝しています。

グルメ好きミュージシャンの忘却飯は……?

原作は単行本で読みました。主人公のサチコさんは、かわいらしいといっても少しいびつじゃないですか。それゆえに目が離せなくて、とても好きです。ネジが1、2本外れているキュートさみたいな(笑)。

それにしても、本当においしそうな料理ばかり出てきますよね。見ればわかると思いますけど、僕は食べることが大好きなのでたまりません(笑)。ちなみに僕の忘却飯は「うどん」です。だから讃岐うどん編が特にお気に入りで、いろんなうどんを食べたいのはもちろん、「うどんタクシー」にも乗ってみたい! じつは2度ほど香川県にうどんを食べに行ったことがありますが、その時はうどんタクシーの存在を知りませんでした。だから次こそはぜひ!(笑) 行ったことのあるところがモデルのお店が出てくるとテンションあがりますよね。讃岐うどん編でも何店かありましたよ。

讃岐うどん編でサチコが乗る「うどんタクシー」(左)と、澤部さんが行ったことのあるお店(?)での忘却シーン(右)。

ほかにはラムしゃぶ(10集)も。「おっ、ここ行ったことあるぞ!」と声を出して驚きました。ライブツアーの打ち上げで、すすき野へ行った時に食べたんです。あと、ゆしどうふ定食(4集)のお店も沖縄ツアーで。職業がら地方へよく行くのでラッキーです(笑)。

作品に出てくる料理で食べてみたいのは、ローメン(6巻)。料理自体知らなかったので。それと、ドラマの第2話にも登場した「ぼんご」のおにぎり。以前から気になっていたお店で、漫画もドラマも楽しかったので、より行きたい気持ちが強くなりました。

この先、自分のお気に入りの店が出てきたら、うれしい反面、人気が出すぎて入れなくなったらどうしよう、という複雑な気持ちになると思います(笑)。

サチコとジーニアス黒田先生が絶品おにぎりをほおばる!(左)。長野県伊那地方の麺料理「ローメン」(右)。

インスピレーションの源、漫画から音楽へ。

とにかく漫画が大好きで、「スピリッツ」の作品も単行本で買っています。たとえば、この間連載が終わった『猫のお寺の知恩さん』など、落ち着いた日常系が好みですね。
そもそも人生で飛びぬけて印象に残っている最初の漫画は、小学校低学年頃に読んだ吉田戦車先生の『伝染るんです。』なんです。母が好きで家に全巻置いてありました。おしゃれなバーで「沢蟹ダブルで」と注文するネタとか、30円で憶測を売るネタとか、すごくシュールでおもしろくて、いまだに頭から離れません(笑)。

澤部さんが人生で初めて衝撃を受けた漫画『伝染るんです。』の名場面。©吉田戦車/小学館

そのほかに藤子・F・不二雄先生のSF短編も分厚い愛蔵版がありました。『ミノタウロスの皿』だったり『流血鬼』だったり、恐るおそる読みながら圧倒された記憶があります。でも、中学生になったらあまり漫画を読まなくなったんです。思春期だったのかな? だけど高校に入ったくらいに『神戸在住』という作品に出会い価値観が変わり、いろいろな漫画を自主的に読んでいこうという気持ちになりました。タイトル買いもしましたね。RCサクセションの曲名をタイトルにした『イエスタデイをうたって』とか。


漫画と音楽はすごく相性がいいと思います。漫画からもらったインスピレーションを曲作りに活かすのは常々です。漫画を読んで言葉にできない気持ちに遭遇した時に気持ちがたかぶるので、その勢いで曲を書きだすことも。どうしたらこのシーンの、この感じを音楽で表現できるんだろうと、ずっと考えていますね。本当は漫画が描けたら一番いいと思うんですよ。でも、絵も描けないし、話もつくれないので、それで音楽をやっているという自覚があります。

自分らしさと原作のテイストをミックスした集大成。

今回のオープニング・テーマの『忘却のサチコ』も原作からのインスピレーションを音楽にしました。サチコさんのいい意味でつっけんどんなかわいさを表現するために、急に拍を変えたり。歌詞でいうと歌い出し直後の「あるのです」のところですね。そういう「沢蟹ダブル」的なスカートらしいひねくれたことに、今までなかった華やかさがプラスされた集大成的な曲になったと思います。もしこの楽曲を気になってくれたら、ぜひ昔の曲も聞いてみてください。

interviewer/Naoki Kamiya(神谷直己)

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