2014.06.25
ビッグコミック

赤江珠緒さん「川原泉さんはラジオで語るときの大切な指針。『師』って感じです」◆屋根の上のマンガ読み

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屋根の上のマンガ読み

第54回 赤江珠緒
《プロフィール》1975年生まれ、フリーアナウンサー。パーソナリティを務めるTBSラジオ『たまむすび』は人気番組となり、共演者との掛け合いも好評を得ている。テレビ朝日「モーニングバード!」MCなどでも活躍中。

「川原泉さんは、きっと照れ屋さんなんですよ。そこがすごく好きなんです」

赤江珠緒

いちばん好きな漫画家さんは川原泉さんなんですけど、人間と人間の距離感がものすごく好きで、自分の人生の指針になっているところもありまして。かと言って、説教くさいことは一切なくて、普通にさらっと読めちゃうんですけど、そこに人間の本質みたいなものが込められてて。なんていうのかなぁ、仙人の書を読んでるみたいな感じがして、行き詰まった時に読むと「まいっかー」と思える。ドライだけどあったかい、それでいてベタベタしてないというところがいいんですよね。なんてことないセリフに使われるボキャブラリーも素敵で、短いのに唸るような表現がいっぱいあったり、それに出てくる女の子がみんなたくましい。
たとえば大恋愛でドロドロにもできる話が、この人の手にかかると、ちょっと笑っちゃうね、そんなに大したことないじゃんというふうに描かれたり、逆に些細なことがちょっと泣ける表現になってたり、ほんわかさせてくれたり、そういうのが好きですね。きっと照れ屋さんなんですよ。お会いしたことないのに言うのもなんですけど。その照れた感じがすごく好きなんです。
[銀のロマンティック…わはは]は、フィギュアスケートのペアのお話です。バレエをやっていた女の子と、スピードスケートをやっていた男性が、フィギュアは初心者なのに組んでみたところ、全日本で優勝しちゃうんですよ。もちろんふたりの能力あってのことなんですが、日本のフィギュアのペアは競技人口が少なくて、そこに運の良さも加わって。この作品は1986年ごろのものですが、今年のソチ五輪でも日本のペア選手の少なさが指摘されていましたね。そういうペアフィギュア界の内情を盛り込みつつ、ちょっとグッとくる結末を見せてくれる短編です。

銀のロマンティック...わはは

[銀のロマンティック…わはは] ©川原泉/白泉社
※白泉社文庫[甲子園の空に笑え!]に収録

男女の視点の違い

ラジオには、ときどき漫画家さんからもメールいただきます。[風光る]渡辺多恵子さんもリスナーさんで、それをきっかけに親交があって。[風光る]は、新選組に入りこんじゃう女の子を歴史のパズルにうまく組み込んでますし、巻末で紹介される京都と江戸の風景の違いとか、文化的なことも勉強になります。漫画家さんが、取材したり資料を読み込んだりして、それを実際に描くというのはすごい労力ですよね。
いろんな時代物があるなかで、[天上の虹]は、あんまりスポットが当たってこなかった天智天皇・天武天皇あたりの時代が舞台です。事件や出来事を、和歌を引用しながらたどっていくんですが、男性からの視点と女性からの視点の違いがすごく出るので、大人の男性にもおすすめですね。絵にも凄みがありますし。
[やっちまったよ一戸建て!!]も、男性が読んでも面白いと思います。家を建てるまでの、伊藤理佐さんご自身の体験をエッセイみたいな感じで描いてて、笑えますね。
[柔道部物語]で忘れられないのは、「どうやったら自信がつきますか?」と聞かれた先生が「『俺は天才だ』と毎朝言え、そのかわり、バランスを取るために『俺はバカだ』とも言え」というようなセリフがあるんですけど、ギャグっぽいなかにさらっといいことが入ってる感じなのがいいなと。

指針になる作品

このインタビューで紹介する作品に、何を選べばいいのか正直悩んだんですが、いま自分がラジオの仕事で日常のなんてことない話をさせていただいたり、テレビでニュースを扱ったりするときに、どういうコメントをしたらいいんだろう、どういう距離感で、どういう温度差でしゃべったらいいんだろうと思ったときに、大切な指針になってるなと思ったのがこの方々の作品だったんです。とくに川原泉さんの、ドロドロした感情がふるいにかけられたような、カラッとした感じが心地いいんですよね。川原泉さんは「師」って感じです。

赤江珠緒

《赤江珠緒さんのおすすめ作品》
[銀のロマンティック…わはは]川原泉
[天上の虹]里中満智子
[やっちまったよ一戸建て!!]伊藤理佐
[柔道部物語]小林まこと
[風光る]渡辺多恵子

《こんな作品もおすすめしていました!》
[バビロンまで何マイル?]川原泉
[笑う大天使]川原泉
[美貌の果実]川原泉
[みゆき]あだち充
[乙嫁語り]森薫

■次回予告:第55回 加藤登紀子(ミュージシャン)
『はだしのゲン』作者である故・中沢啓治氏の遺した詩を
メロディに乗せて歌う「広島 愛の川」をリリースした加藤登紀子さん。
『はだしのゲン』への思い、親交の深かった青柳裕介氏『土佐の一本釣り』など!!
<7/10(木)更新予定>

(取材構成:ビッグコミック編集部・根本和佳(DAN)、撮影:松原康之)

関連リンク
ビッグコミック公式

【初出:コミスン 2014.06.25】

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