トップ  >  細野晴臣さん「レコード時代と同じように、マンガをジャケ買いしてます」◆屋根の上のマンガ読み ( 2014/05/10 )
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2014.05.10

細野晴臣さん「レコード時代と同じように、マンガをジャケ買いしてます」◆屋根の上のマンガ読み

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屋根の上のマンガ読みタイトルイラスト
第51回 細野晴臣
《プロフィール》1947年生まれ、音楽家。1969年エイプリル・フールでプロデビュー後、はっぴいえんど、ティン・パン・アレー、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)などを経て現在に至る。現在も精力的にライブ出演中。

「ジャケ買いするとき、一目で興奮させる何かがあるんです」


細野晴臣さん正面

小学校から高校まで、いたずら描きをいっぱいしてたんです。漫画家になりたくて。高校では隣の隣ぐらいに西岸良平くん([三丁目の夕日]の著者)がいて、交換日記みたいにいたずら描きをやり取りしていたら、だんだんストーリー性が出てきて、描き足したりセッションしたりしましたね。僕は忍者ものが好きで、白土三平タッチで描いてました。それを受けてなのかどうか、西岸くんも[忍者武芸帳 影丸伝]っぽい描き方をしてたけど、キャラクターは今に通じる丸い絵でしたね。
とにかく中学のときに観た黒澤明の『用心棒』が衝撃的で。それ以来、時代劇にずっぽり入っていって。同時期に白土さんの劇画が出てて、それを映画のように読んでいましたね。細かい解説がついてて、それで知識を吸収しました。トリカブトは毒だとか(笑)。
子供のころは手塚治虫杉浦茂を読んで育ったようなものなんです。根本的には手塚さんが持ってるロマンティックな未来とか、ロボットとか、未来都市の図とか、そういうものにすごく影響されましたね。手塚治虫のマンガには、ロボットの変形とか男女が入れ替わったりとか、「変身」がよく出てくるんですけど、そこにすごくエロティシズムを感じてたんです。親は杉浦茂を読んでると「そんなバカなマンガはやめなさい。でも手塚ならいい」と言うけど、子供たちは知ってるわけですよ。手塚治虫のほうが毒が強かったんです、ほんとは。好きなSFと手塚さんの世界と、それとまったく違う杉浦茂のギャグの世界。それが僕の中で渾然一体となっているんですね。

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諸星大二郎劇場]
① 男たちの風景]収録「アダムの肋骨」©諸星大二郎/小学館


ホラーが好き


 諸星大二郎さんも大好きですね。[マッドメン]っていうのが好きで歌にもしちゃいましたし。[孔子暗黒伝]は情報量が圧倒的ですよね。他には[夢みる機械]とか[アダムの肋骨]とか、短編もおすすめです。作品集が出るたびに何回でも買っちゃいますね。あとは花輪和一さんとか丸尾末広さんも読んでたなあ。ちょっと怖い、おどろおどろしいものを探していたことは確かですね。ホラーが好きだから。
最近のスピリッツだと、[アイアムアヒーロー]が好きです。怖くてね。映画みたいで。たとえばゾンビのような感染者たちの言葉が、フキダシの中で崩れてくる。字面でくるわけですよ。それはマンガならではの怖さですよね。ホラー映画はよく観てますけど、マンガのほうが怖いですね、やっぱり。想像力を喚起させられますから。そういう、ちょっとわさわさするような怖いマンガが好きです。

ジャケ買いの楽しさ


 書店のマンガコーナーに行っても、何読んでいいかわかんないわけですよ、量が多すぎて。昔は、全然知らないレコードを、ジャケットがいいから買ってみたりしてたんですけど、それを最近はマンガでやってますね。ジャケ買いというかタイトル買いというか。それでずいぶん前に、変わったタイトルだなと思って[進撃の巨人]を読んでたので、今では「こんなに売れてるんだ」とびっくりしますね。[ハカイジュウ]も最初のつかみが面白くて。最初の15分で引き込んでくれる映画が好きだったので、マンガでもそういうのが好みです。最近のジャケ買いでは[僕だけがいない街]が良かったですね。
子供のころはヒットチャートを聴いてましたけど、当時は自分がいいなと思う音楽は全部ヒットしてたんですよ。だから聴くのはヒット曲になるわけですね。ジャケ買いするとき、一目で興奮させる何かがあった。それだけ出来がよかったんです。マンガでも同じですよ。

細野晴臣さん横向き
《細野晴臣さんのおすすめ作品》
[諸星大二郎特選集]諸星大二郎 ※「アダムの肋骨」「夢みる機械」などを収録
[アイアムアヒーロー]花沢健吾
[ハカイジュウ]本田真吾
[僕だけがいない街]三部けい
[忍者武芸帳 影丸伝]白土三平

《こんな作品もおすすめしていました!》
[マッドメン]諸星大二郎
[進撃の巨人]諫山創
[PLUTO]浦沢直樹・手塚治虫・長崎尚志
[高校アフロ田中 シリーズ]のりつけ雅春
■次回予告:第52回 泉谷しげる(ミュージシャン)
[佐武と市捕物控]から[サラリーマン拝!]まで......
創作のキモや線の色気、そして印刷の粗さが生み出す価値を語る!
いいお言葉、いただきましたよ!
<5/24(土)更新予定>

「屋根の上のマンガ読み」

(取材構成:ビッグコミック編集部・根本和佳(DAN)、撮影:松原康之)

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【初出:コミスン 2014.05.10】

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