2014.01.02
ビッグスペリオール

新春企画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男先生インタビュー(2/3)


コミスン新春特別企画、太田垣康男先生ロングインタビュー。前回は太田垣康男先生と『機動戦士ガンダム』の関わりから、『サンダーボルト』執筆に至るまでの話でしたが、第2回は太田垣先生がガンダム漫画を描くアプローチについて、より踏み込んで伺っていきます!

 

<太田垣康男先生インタビュー (1) (2) (3)

 

スペリオール表紙

 

――『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の連載がスタートして「スペリオール」の表紙にガンダムが登場したときには、驚いた人も多かったと思います。

 

ガンダム漫画を描くことを決めたのには、確信もあったんです。「スペリオール」は30、40代のサラリーマンを読者層にしているんですけれど、リアルタイムの30、40代ではなく、創刊当時の30、40代がターゲットになっている気がしていたんですよね。いまの30、40代は普通にガンダムが好きだろうと思っていたので、これはいけるんじゃないかという確信はありました。それでなければ始められないので。少しハラハラもしましたけど、結果、反応はよかったので……

 

――すでに色々な人の中でイメージができているガンダムを自分が描くというプレッシャーはありましたか?

 

そこは、KADOKAWAさんが「ガンダムエース」という雑誌を作って、そこでガンダム漫画が沢山描かれていたので、気持ちとしては割りと楽でしたね。

 

太田垣先生写真2

 

――『サンダーボルト』の場合、いわゆるアニメのコミカライズとは違うアプローチでの漫画化ですよね。

 

そうですね。多くのガンダム漫画は、ガンダムマニアにとっては十分面白いと思える作品だと思うんですけれど、「スペリオール」で連載する場合はそれではダメなんですよ。安彦良和先生の『ジ・オリジン』ですら、アニメの『機動戦士ガンダム』をどうしても強く意識して読まざるを得ないので、最初から漫画の技法で描いた作品であれば対抗できる気がしたんです。だから『サンダーボルト』はある意味「打倒、安彦先生」という意気込みで始めました。そこと勝負して、なんとか対抗できる自信がなければ、恐ろしくてやれないですよね。

 

――あくまでひとつの漫画作品としてガンダムを描く、ということですか。

 

漫画の技法をフルに使って、単独の漫画作品として読めるものとして。多くのガンダム漫画は、やはりガンダムを好きな人に向けて作っているので、いたしかたなく”一見さんお断り”な部分があると思う。でも、連載漫画は、誰がどこから読んでも入れるものでないといけないんですよ。初めて雑誌を買う人がお客さんなので、その週の「スペリオール」で『サンダーボルト』を読んで、全ては把握できないにしても、引き込まれるものにしなければ漫画として不十分だと思うので、ガンダムファンでない一見さんでも入れる作品にすることは意識しています。

 

――ガンダムを知らない人に向けてガンダム漫画を描くというアプローチはなかなか無いのでは。

 

そうですね、やはりみなさんガンダムありきで始まっているので。その意味では、自分のやり方は少しアウトローなものだと思います。

 

――連載漫画としての『機動戦士サンダーボルト』の目標はどこにあるんでしょうか。

 

うちのスタッフなんかも、基本は『機動戦士ガンダム』を知らない世代で、そういう子たちに読ませて通じるかが最初のハードルだと思うんですよね。ガンダムは知らないけれど『サンダーボルト』は面白いと思ってもらえれば勝ちだと。もちろん、メインのターゲットはガンダム世代の人たちなんですけれど、その人たちが喜ぶものを目指して漫画を作るのは、専門誌の発想だと思うんです。雑誌連載で多くの人に読んでもらうために、初めて読む人、若い世代、自分の作品を読んだことが無い人にどうすれば通じるか工夫して描くのがスペリオールでやる意義だと思うので、『サンダーボルト』はガンダムを知らない人に触れてほしい作品です。それで「ガンダムってちょっと面白いかも」と広がってもらえれば、一番嬉しいですね。

 

――実際、Twitterで受けるファンの反響などからは手ごたえを感じられますか?

 

Twitterで読みましたという感想をいただけるのもありがたいんですけれど、漫画家にとっては単行本の部数がどれくらい出たかというのが一番の評価基準だと思っています。ファーストガンダムのファンに向けた漫画には、やはり読者数に上限がある感じがするんですよ。お蔭さまで単行本が売れているということは、固定のガンダムファン以外の方も読んでくれているんじゃないかな……と思っています。

 

――『ガンダム』だから買うという人だけではなく、面白い漫画だから買う、太田垣康男の漫画だから買う、みたいな人にも読まれているということですね。

 

そうですね。ファンの人達は、「あの太田垣が描くから普通の漫画にはならないだろう」という期待を持ってくれていると思うので、そういう期待に応えつつ、ちょっと裏切りつつというのを心がけています。

 

コマ_FAガンダム

 (C)創通・サンライズ

――『サンダーボルト』のビジュアル面についてもお伺いしたいのですが、劇場版三部作のデザインと比べて『サンダーボルト』ではモビルスーツの解釈や表現が異なっていますよね。

 

趣味で描いていた頃の絵は、デザイン的には元々のモビルスーツを今風のアレンジで描いたら面白いかなという程度だったんですけれど、『サンダーボルト』は失敗できない大勝負だったので。他のガンダム漫画に負けないためにも、ちょっとアレンジというレベルではなく、いま自分の考えられる最高のもので勝負しようと思ったので、出来上がりも大きく変わっています。最初にフルアーマーガンダムを描きあげた時には「いいデザインが出来た!」と思ったんですけれど、これを連載で毎回描くのかと思うと恐ろしくてぞっとしました(笑)

 

――実際、ガンダムはかなり線が多いですよね(笑)

 

多いんですよもう! 描くのにひぃひぃ言っています。

 

――でも、メカについては『MOONLIGHT MILE』でも描く機会が多かったのではないですか。

 

もちろんそこは慣れた作業でもあるので、いまは楽になってきたんですけれど、連載の最初の頃は、やはりガンダムにしろザクにしろ、自分なりの”顔”というものをつかむのが大変でしたね。

 

――”顔”ですか。

 

特にガンダムの顔はそうなんですけれど、描く作家さんによってイメージが変わるものなので。『サンダーボルト』では悪役としてガンダムを描きたかったので、ちょっと大人顔の怖いガンダムにしたかったんですよ。それを全てのカットで描こうと思うとめんどくさいったら…… まぁ、楽しくなければ仕事にはできないんですけれど(笑)

 

コマ_魔物

 

――その意味では、ガンダムというモビルスーツは、他のメカや原作をされている『FLONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE』に登場するバンツァーと比べてもキャラクター的な要素が強いですよね。

 

強いですね。もちろん、ガンダムには兵器的な要素があるんですけれど、それと同じだけキャラクターとしての存在感がないと魅力が半減してしまうので、単なる道具として扱うと半面しか描いていないことになるんですよね。それは、僕がリアルロボットアニメに感じた物足りなさでもあって、リアリティを追求して、モノ扱いすればするほど魔神としての魂が抜けていく感じがしたんです。「兵器」と「魔神」、両方のイメージがミックスしているからガンダムのモビルスーツは魅力的だと僕は思っているので、神格化された偶像的な「魔物」のイメージは必ずいれたいんです。そうでなければ、ザクがひとつ眼の意味も、ガンダムが角を生やしている意味もないと思うので。

 

――ファーストガンダムより後の『ガンダム』も世代によってリアリティの追求とキャラクター性のバランスが変わってきていますよね。

 

『サンダーボルト』がおかげさまで評価を得ているのは、たぶん今のアニメについていけなくなっていた人達が「そういえば自分は昔ガンダムが好きだったな」と思い出して単行本を買ってくれていると思うんですよ。その人達の頭の中に残っていたガンダムのイメージに近かったんじゃないかと。

 

――実際には、ファーストガンダムもすべてがリアルというわけではなくて、ジオン公国軍のメカを見ると、リアルSFメカというより、いかにもアニメの”悪役メカ”的なイメージが含まれていたりします。

 

ライディーンみたいなアニメの敵メカの流れが残っていますよね。だからこそやりがいがあって、あのデザインのメカを今の自分の画力で描いたときに、どこまでリアリティをもって見せることができるのかというのが、密かな楽しみでもあります。

 

コマ_ジオンメカ

 

――『サンダーボルト』に登場するメカを見ると、ジオンらしさを残しつつも、ちゃんと作品におけるリアリティを感じるのですが、デザインのポイントはどこにあるのでしょうか。

 

いかにアニメっぽくしないかだと思います。僕はよく映画を観ていて、それこそハリウッド映画にもSF作品は山ほどあるじゃないですか。でも、ハリウッドSFのデザインと日本のアニメのデザインラインは全くシンクロしないんですよね。日本の作品はデザイン性を重視しているのに対して、ハリウッドは実用性をイメージして作っているんですよ。だから、自分がサンダーボルトを描くときに、ハリウッド映画的なデザインライン、いかに合理的に考えて実用重視でデザインするかという方向性でガンダム世界を描くことを考えたんです。

この感覚は、いまだに日本と海外の作品を分ける溝だと思っているので、『サンダーボルト』は、ハリウッドスタイルのメカデザインを日本の漫画に取り入れるだけでこれだけ差別化できるんだという実例だと思っています。そういうアプローチを変えることで、ガンダムだってまだまだオリジナリティを出せると思うんですよ。

 

<太田垣康男先生インタビュー(3)に続く>

 

 

太田垣康男先生描き下ろしイラストプレゼント!

 

太田垣先生サイン入りイラスト写真

 

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<コミスン編集チーム 平岩真輔>

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機動戦士ガンダム サンダーボルト / 1
機動戦士ガンダム サンダーボルト / 2
MOON LIGHT MILE / 1

【初出:コミスン 2014.01.02】

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