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ビッグスペリオール

2014.01.01

新春企画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男先生インタビュー(1/3)

ビッグスペリオール

『MOONLIGHT MILE』で月面開発を取り巻くハードな人間ドラマを描いてきた太田垣康男先生が人気アニメ『機動戦士ガンダム』の世界を描く意欲作『機動戦士ガンダム サンダーボルト』。「ビッグコミックスペリオール」で好評連載中の本作も、単行本2集を数え、この12月には作中に登場するモビルスーツがプラモデル化されるなど新たな広がりを見せています。コミスンでは新春特別企画として、太田垣康男先生にロングインタビューを敢行! 3回に分けてお送りいたします。


 


表紙_1巻


 (C)創通・サンライズ


 


 


――まず、太田垣先生と『機動戦士ガンダム』の関係からお伺いします。『機動戦士ガンダムサンダーボルト』を描かれている先生にとって、『機動戦士ガンダム』とはどのような作品なんでしょうか。


 


僕の世代にとって『機動戦士ガンダム』は初恋の人の様なもので、たぶんこの先、何年生きてもずっとガンダムが好きだと思うんですよ。下の世代が『キン肉マン』を、そのさらに下の世代が『ポケモン』を好きなように、ずっと変わらず自分の中で愛すべき作品ですね。


相対的に見れば、ガンダム"だけ"が圧倒的に優れていた作品だったというわけではないかもしれない。古今東西の名作映画に比べれば足りない部分もあると思うんですけど、自分の意思で観る作品を選ぶようになった頃に、最初に観たものが『機動戦士ガンダム』だったので、初めて受けたカルチャーショックみたいなものです。


 


太田垣先生写真1


 


――『機動戦士ガンダム』以前にもアニメはお好きだったんですか?


 


もちろん『マジンガーZ』や『宇宙戦艦ヤマト』も好きなんですけれど、自分よりお兄さんの世代のものという感覚があったんですよね。『機動戦士ガンダム』で初めて自分の世代のものという実感が持てたことが、大きな違いだと思います。


 


――ガンダムが自分の世代の作品だと感じられたのは、それまでの作品と何か違う部分があったのでしょうか。


 


思春期を迎えた頃に何を観るか、ということだと思うんですよね。僕らより上の世代はたぶん、思春期に司馬遼太郎や太宰治とかに触れたんですよ。でも僕はそれらを見てもたいして楽しめないんですよね。背伸びをして読んで理解をしようとは思うんですけれど、やはり思春期の頃に触れていない、タイムリーでないというだけで受け止め方はすごく変わると思う。僕の場合はその時期に、幸か不幸か『機動戦士ガンダム』に出会ってしまったので、40歳過ぎても「ガンダム、ガンダム」と言っています(笑)


 


――『機動戦士ガンダム』より後のロボットアニメについては、どうですか?


 


一応、リアルロボットと言われていたものは、『重戦機エルガイム』くらいまではひと通り観ていました。『機動戦士ガンダム』劇場三部作の時に感じた高揚感を求めて観るんですけれど、その度に「何かが違う」という感じで、足りないという気持ちのほうが強くなっていって。


 


――やはりガンダム的なものを追い求めてリアルロボットものを観ていたのでしょうか。


 


あの世代のファンはみんなそうだと思います。日本映画や外国映画を観てきた上の世代からすると、なんでそんな些細なことでと思われるでしょうけど、ガンダムの兵器的な運用の仕方とか、そういうところが、思春期の中学生にとっては本当に新しかったんですよね。


 


コマ_兵器運用


 


――玩具を売るためのCMとして怪獣やメカを見せていた当時のアニメにとっても、量産型モビルスーツのようなものは斬新でしたよね。


 


でも当時のガンダムは、特にセールスがいいわけでもないので、玩具会社やテレビ局からはそんなに期待されていなかったと思うんですよね。だからチェックも緩くなって好きなことがやれる情況になった。注目されていないから自由が利いたんだと思います。


 


――実際『機動戦士ガンダム』のテレビ放送は打ち切りになっていますからね。その後、ガンプラがブームになり、AFVのイメージを取り入れたリアルタイプモデルやMSVなども展開されて、現在のガンダムのイメージに繋がっていきます。


 


どっぷりブームにつかっていたので、友人が買ってきた『HOW TO BUILD GUNDAM』(ホビージャパン刊)を奪いとって読んだり(笑)、自分でも作例を真似てガンプラを作っていました。その後、ファンが作ったものがブームになって、それをバンダイが商品化したんですね。劇場三部作もそうですけれど、もともと打ち切りだったアニメをファンが後押しして大きな会社を動かしたという、自分たちの世代で世の中をちょっとだけ動かせた感覚に、当時の中高生にとって大きな達成感があったんです。


 


――その意味では、先日イベントでも同席されたバンダイの川口名人ことストリームベースの川口克己氏はヒーロー的な存在だったのでは。


 


そうですね!(笑)川口さんは当時まだ大学生だったので、ほんの少しだけ上のお兄さんじゃないですか。そういう人達が世の中に出て活躍して、大きなものを動かしているという感覚に勇気付けられたし、憧れました。


 


――ブームの頃にはガンプラを題材にした『プラモ狂四郎』のような漫画もありました。


 


その頃になると、自分も漫画家になろうという意識が強くなってきて...... ヤング誌や青年誌で活躍することを目指していたので、児童誌(「コミックボンボン」)に掲載されていた『プラモ狂四郎』などのプラモ漫画はあまり読んでいなかったですね。後になって、見ておけばよかったなと思いましたけど。


 


――ガンダムについては、その後も追い続けていたんですか?


 


19歳で上京してアシスタントに入るのをきっかけに、一度アニメから離れました。他に勉強しないといけないことが沢山あったので、趣味だった模型などもいったん封印して、それこそ十数年間まったく触れませんでしたね。


 


――漫画家を目指してガンダム断ちをされた太田垣先生が『サンダーボルト』を描くに至る、ガンダムとの「再会」はどのようなものだったんですか。


 


漫画家として連載を持つようになって、多少、生活が落ち着いたところに、たまたま入ってきたアシスタントの子がガンダム好きで、「こんな若い子がガンダムを好きなのか」と驚いて話を聞いてみると、何だか知らないタイトルを言うんですよ。聞けば、OVAでガンダムの続編が出ているというので、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』を観てみたら、すごいクオリティじゃないですか。それで模型屋にも行ってみたら、みんな色プラ、ポリキャップで接着剤もいらないようになっているのにまた驚いて。しばらくは懐かしさもあって新しいガンプラを買い揃えたりしていました。


 


――旧キットに比べると、近年のガンプラの進化は凄まじいですからね。Twitterで公開されていたガンダムの絵も話題になりましたよね。


 


1~2年ほどのガンプラブームの後、しばらくしてTwitterを始めるようになって。Twitterでは絵を描いてタイムラインにアップする人が多いので、自分も何か描ければいいなと思ったんですけれど、仕事をしながらだとなかなかきっかけがなくて。ある時、ボラーレの関さん(デザイナー。『サンダーボルト』の装丁も手がけている)が、シャアの絵を描いているのを見て、それに合わせるように自分もガンダムの絵を描いてアップしてみたんですよ。そしたらすごい反応がよくて。また次の日に関さんがシャアを描いて、自分もガンダムを描いてという事を繰り返していたら、そのやりとりが楽しくなってきて。











――「漫画家さんのガンダム祭り」としてツイートがまとめられたりして、盛り上がっていましたね。


 


漫画家は通常、自分の描いた作品に読者のリアルタイムな反応はないんですよね。個人情報保護法が施行されるまでは、ファンレターやアンケート用紙の感想も頂いていたんですけれど、住所や氏名といった読者の情報が黒く塗りつぶされて渡されるようになったんですよ。まったく相手が見えなくなって、本当に味気なくてもらうのをやめてしまったんですよね。そうこうする内に、読者との距離がどんどん離れていく感覚があって、一生懸命描いた漫画が果たして誰に届いているのかが見えなくなっていた時期に、Twitterを始めたんです。


 


――Twitterではファンの人の反応が直接返ってきますからね。


 


始めてみたら、こんな沢山ファンがいてくれたんだと思うくらい反応が返ってきたので、その人たちに何かサービスをしたくなったんですよね。それもあってガンダムを描いたらすごく喜んでもらえて。ササッと描いたラクガキなんですけれど、毎日1枚ずつアップするという日々が続く中、「スペリオール」からガンダム漫画をやらないかというオファーを頂いて...... これはちょっと運命を感じたので、二つ返事で「やります!」となりました。


 


<太田垣康男先生インタビュー(2)に続く>


 


 


太田垣康男先生描き下ろしイラストプレゼント!


 


太田垣先生サイン入りイラスト写真


 


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<コミスン編集チーム 平岩真輔>



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機動戦士ガンダム サンダーボルト / 1
機動戦士ガンダム サンダーボルト / 2
MOON LIGHT MILE / 1

【初出:コミスン 2014.01.01】

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